トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅熱く艶かしいサウンド

熱く艶かしいサウンド




 Tさんには早い段階からジョーダンワッツの名機であるモジュールユニットを使ったローゼンクランツのフルレンジスピーカー「SP-JVEX」を楽しんで頂いております。このスピーカーの反応の良さを体験したら、他のスピーカーには一切目が行かなくなったと仰るほど気に入っておられます。

 確かに久し振りにお客さん宅で聴くこのスピーカーの音には作った本人の私も思わずその魅力に引き込まれます。

 とに角「音楽なんです!」。

 ステレオの事なんか何一つ考えたくなくなるほど音楽だけに没頭できるのです。

 アーティストの個性がモロに分るので本当にリアルなんですね!。

 この音をオーディオマニアに聞かせるとレンジが狭いとか、情報量が少ないとかいうのでしょうけど、本当の意味での情報量というのはイモーショナルなところがどれだけ感じ取れるかが肝だと私は信じております。この魅力に気がつけば音楽の楽しみは何倍にも膨れ上がります。


 ローゼンクランツスピリットの全てを理解して貰えるほどTさんとはツーカーの仲ですから、本日は隠し玉を持って伺っております。それはまだウェブ上でも未公開ですが、実は役割分担を持たせた信号ケーブルの開発を終えたところなのです。それを初めてお客さんに聴いて貰うのが今日のTさんなのです。

 野球のピッチャーの分業制のように「スターター」、「セットアッパー」、「クローザー」と適材適所を考えた上で設計したケーブルなんです。もちろんケーブルを戸籍簿順に管理して作ってあるのは言うまでもありませんが、何より凄いのは音楽エネルギーの加速度が増すように考えられた構造を採用している事です。

 情報を取り出す方法として、人間の成長過程と同じように次第次第に能力や魅力が備わって行くように、最後ほど細かい音楽表現が得意なようにしてあるのです。正にケーブルの新時代の幕開けです。最高の音楽を目指す方の為に開発しました。

*** 先発 トランスポート コンバーター
中継ぎ コンバーター プリ
ストッパー プリ パワー

 この3つのケーブルをセットと考えた設計です。

 繋いだが最後、これを聴いたらもう元に戻す事は出来ません。

 「支払いの事など当分考えないで構いませんから」とけしかけると、

 『今日はとに角、このままにしておいて下さい』と相成ったのです。

 まだ値段も名称も決まっておりません。


 音の観阿弥と世阿弥


 ----- Original Message -----
 From: "T.T"
 To: <info@rosenkranz-jp.com>
 Sent: Monday, June 07, 2004 7:35 PM
 Subject: 音の観阿弥と世阿弥


 貝崎さま

 毎度お世話になります。
 先日はどうもありがとうございました。

 礼が遅れてしまいましたが、実はあれから毎日忙しく、毎晩帰宅が10時、11時くらいという日が続き、音楽を聞くどころではなかったのです。やっと今度の土日にまともに聞くことができました。もう1週間もそのままにしていたので果たしてあの夜の音が出てくるのか、あれは貝崎さん親子がいたあの一夜だけの出来事ではなかったのかと不安でしたが、幸い杞憂に終わりました。

 しかし、なんと言う音の違いでしょう。今の家に引っ越してから1年半。初めてのプレハブ造りの家の音の抜けの悪さ、響きの悪さに愕然とし、それから悪戦苦闘の日々が続きましたが、あの一夜で私の手元に音楽が甦り、戻ってきたような気がします。

 しかし、ご子息のあの天才的とも言えるチューニングには心底驚きました。一体何をやらかすんやと呆然と眺めて入るうちにどんどん音は良くなっていく、それも基本的なセッティングはほとんどいじらずにですから。もう呆気にとられてしまいました。

 一番驚いたのはアナログ再生のチューニングです。世代的には完全なCDエイジでありながら、ショック療法とファインチューニングで、泣かず飛ばずだったアナログ再生を見事に蘇生させるどころか、その後に聞いたCDの優秀録音が貧相に聞こえるほどにまでなったのには言葉が出ないほどでした。

 ところが信じ難いほど良い音になったLPの音を凌駕する音が次はCDから聞こえてきたのです。それはご子息の意見を取り入れ改良したというインシュレーターの新製品に変え、さらにはケーブルをやはり親子合作という加速度構造の物につなぎ変えた時にやって来ました。

 ロックの熱いビートを叩きだし、ジャズは心地よくスイング、ブルースは喉の奥から南部の泥の臭いを絞り出す。まさに音楽のグルーブを捉えたRosekranzならではの現象です。そして極めつけは、一見、グルーブ感などとは無縁なはずの初期バロックの作曲家、モンテヴェルディを再生したときです。今までどちらかというと静的な音楽と思っていたのにここではまるでジャズのようなスイング感とプレーヤ同士の掛け合いを感じるのです。単に譜面をなぞっているわけでなく、真に音楽に喜びを感じ共有しながら演奏する音楽家たちの姿が浮かび上がってきました。これには脱帽です。時間はすでに深夜12時、貧相なプレハブの家がイタリアの教会になったが如しでした。

 今回はまだ値づけもしていないONE-OFFの商品を当方のために使っていただき本当に感激です。請求書が果たしていくらになるのか一抹の不安はありますが、ここで今来た道を引き返す気にはなれません。

 然し、ご子息の進歩は空恐ろしい限りですね。次に会うときには一体どこまで進んでいるのか想像もつきません。この父にしてこの息子、まるでオーディオ界の観阿弥・世阿弥親子のようでもあります。これから二人の音の「風姿花伝」はいかがなりますことやら。乞うご期待!というところでしょうか。

 本当にどうもありがとうございました。


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